『イノベーション三部作』クレイトン・クリステンセン著 |
イノベーション三部作は、クレイトン・クリステンセン教授による以下の著作の総称である。
著者のクレイトン教授については、堀紘一氏によるインタビューがあるので興味があれば一読していただきたい。
http://toyokeizai.net/articles/-/36826?display=b
この一連の著作を読めば、経営の考え方に多くの良い影響を得られるはずだ。 経営戦略をオーナーシップをもって考えるにあたっては、優れた理論が有用である。
この一連の作品は顧客認識にも、競合把握にも、自社の方針と組織体制にも極めてインパクトのあるものである。それらに影響をもつような大企業の敗退について、プロセスと対応策を理論立てて説明しているのだ。持続的経営を志向する全ての経営陣に有益だろう。
本を読み進める上で有効な概略を以下に述べる。 まず、この本の扱う「経営理論」の定義は、 「行動と結果の因果関係のポイントを説明するもの」「因果関係の発動する環境について分類して説明するもの」である。 様々な理論展開がなされるが、因果関係のポイントと発動する環境についてまとめながら読み進めて知識を整理したい。
次に、現実認識の視点として、 「顧客(候補)の動態とニーズの動き」 「競合の進出する余地」 「組織のRPV(資本、プロセス、価値基準)と業界の商流であるバリューチェーンの変化」 から知識を整理している。 大量の事例とその技術の説明が掲載されているので混乱しやすいが、この観点から内容を把握すると読みやすい。
結論の概略は、3Cにあわせると以下の三点にまとめられる。 顧客について、イノベーションは ・潜在顧客に向かう新市場創出型 ・現製品に改良を期待するハイエンドの顧客に向かう持続的改良型 ・もう満足しているローエンドの顧客に向かうローエンド型 があるため、自社の主要顧客だけでなく他の顧客に注意する必要がある。
競合について、イノベーションは製品性能の供給過剰が顧客に対して起こっている場合、その層の顧客については常に成立しうるものであるため、競合がそうした動きをしているか注意する必要がある。
自社組織について。プロセスと価値基準は時と共に最も収益の得られている顧客に対応するものになっていくため、放っておくと、大企業であればあるほど新市場型イノベーションの対象となる小規模市場には常に対応できない。利益を見込めないので金銭的、技術的に資源があっても向かわないため。このような場合、スピンアウトさせた小規模チームにプロセスと価値基準の独立を認めて対応させるか、そのような会社を買収して独立的な運営を認めるしかない。また、販売網にある組織も価値基準を固めているため、変わらなければ交代しなければならない。
「イノベーションの最終解」を読むだけでも結論はつかめるので、その詳細な把握をしたくなったさいに順次他の2冊を追加で読んでいくというのもおすすめだ。
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