「フリー」クリス・アンダーソン著

本書は科学雑誌「wired」の編集長を10年務め、その後起業して経営者となっている人物が経済活動の新たな視点を提起する本だ。
あらゆるデジタルサービスが無料化を進めているが、それはコンテンツを無料で配信することとなる作り手にとって必ずしもマイナスではない、という考えを掘り下げている所は現代のビジネスモデルを考えるのに有用だと思う。

[見解]
無料ビジネスは「一部だけ無料」「第三者から料金獲得」「特別なものだけ有料(フリーミアムと呼ばれる)」の3パターンあり、これらは従来から存在していた。しかし無料化しやすいデジタル情報が増えており、今後特に注目されていく。
[内容]
ファンを得るまでは無料で活動するアーティストや無料試供品など、無料ビジネスはもともと存在していたが、これからサービスの一部をYouTubeで無料配信する、ゲームの一部だけ無料で遊べるなどデジタルを絡めた無料ビジネスが増える。
この直近の例では、TEDが内容を無料配信しつつも来場チケットを高値で売ることに成功していることなどを挙げている。
また、広告掲載で収益をあげ、利用者は無料というビジネスは既に多く成り立っている。

[比較と特徴]
デジタル技術の活用方法の1つとしての無料化活用ビジネスにテーマをしぼり、具体例をあげながら説明している所が特徴だ。
他にデジタル技術のビジネスへの活用を提案する本には大前研一氏の著作「テクノロジー4.0http://kazunotesu.jp/blog-entry-119.html?sp」がある。
比較対象を挙げたものの本書の内容は無料化だけを扱う点でとても独特なので、内容の気になる方は書店の立ち読みでも、実際に読んでみるのが良いだろう。




未来予測を投資に活用する技術を述べた本

ビジネス英語なら GlobalEnglish 日経版

「人工知能は人間を超えるか」松尾豊 著

国内外の大学で研究を行い、人工知能研究の第一人者である著者が現在の人工知能について説明し正確な理解を広めようとしている本。
今後の人工知能の技術レベルの向上と社会の変化についても洞察がなされている。

[見解]
現在の人工知能の最先端は意味のある変数(特徴量)を自ら見つけ出して世界の理解を深められるディープラーニングにあり、与えられた個々の変数と結果の間にあるパターンだけを発見してきた機械学習とは一線を画する。但し、理解を深める速さや正確性が高まることにとどまっている。
異常検知や画像診断といった分析も機械に置き換わっていく。
企業内の活動を見直したり、産業の業務プロセスを変革するような新規事業が模索されている。

ディープラーニングは、機械学習が個々の変数と事象の関係をひたすら検証するところ、変数同士を括ってみて本当に特徴となる項目を探すことで速さと正確性を高めたもの。
[比較と特徴]
人工知能の分析方法を解説し、その研究発展の歴史が分かるという特徴をもつ本。
既にビジネス本では多く技術の活用が述べられているが、そうした他の本に比べると「与えられたデータを分析して判定する知能」という技術につき特に理解を深められる一冊である。
関わりのある方は、これを読むだけで今後のニュースの理解も変わるのではないかと思う。
[参考となる他の人々のサイト]
http://www.worksight.jp/issues/607.html
ウォークサイトという雑誌の記者による著者へのインタビュー。人工知能の開発段階とビジネスへの活用について応えている。



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「世界は顧客が変える」日経BPビジョナリー編

顧客接点管理のクラウドサービスで有名なセールスフォース・ドットコム社について密着した本。サンフランシスコに本社のあるアメリカのIT企業だが、最大の顧客企業が日本の企業であり、データセンターを関東と関西に置いているなど日本と関わりが深い企業である。

僕がこの企業の本を紹介するのは、クラウドサービスが今後の企業の姿に変革をもたらすと考えているからだ。
本書ではCTOインタビュー、日本企業三社の導入についての紹介を含んでいる。導入事例は、スマートフォンの顧客行動や物の動きをネット上でとらえて対応できるようにする変革である。
また、セールスフォースのベニオフCEOは業務をスマートフォンのみでこなし、メールのやりとりに一時間~一時間半かけるような働き方をしているなど、スマートフォン中心のワークスタイルを情報のやりとりの速度を高めるために行っているという。

[見解]
顧客はスマートフォンの普及とネット環境向上でより多く情報を得られるようになった。顧客の消費活動はそれらを活用するものに移っており、その動向をつかむには顧客接点を深くもち自社へのニーズを知ることが重要になっている。
これを支える根拠は以下の点などだ。
・スマートフォン経済の拡大での顧客行動変化
・顧客の利便性に応えるベンチャーの台頭

[比較と特徴]
新技術から未来を予測する他の本(ケビン・ケリーや大前研一氏の本など)と比べると広い視野での統計調査や主張の検証を行っているような作品ではないものの、1つの時代を象徴する企業に密着し、未来予測を行う内容としているところが特徴であるといえる。
セールスフォースは実際スマートフォンで無料で使い勝手を試すことが可能であり、その利便性が分かりやすい。
著作というよりもセールスフォース社の特性によるが、本の中に出てくる未来的な技術の使用感を自ら感じながら読み進められるところは優れた点だろう。
ちなみに、この会社のサービスサイトのいかにも和訳文なところは弱点の1つだろう。
(英語の学習サイト広告)
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「困ります、ファインマンさん」R.ファインマン著

この作品はノーベル物理学賞を受賞しており数々のエピソードでも知られるリチャード・ファインマン氏の回顧録である。
「ご冗談でしょう、ファインマンさん」という著作のエピソードは人柄の出た笑えるエピソード中心となっているが、本作品は原爆開発やNASAのスペースシャトル事故調査委員会に携わったこと・そこから悩んだ末に出てきた考え(講演)が中心であり雰囲気が異なる。
また、「ご冗談でしょう~」は本屋でもよく見かけるのだが、本書はあまり見かけない。しかし両方読んだ感想を言わせてもらえば、本書も人柄の伝わるエピソードが収められているし、それに加えて問題に対処する考え方や科学技術への洞察があり、圧倒的に優れた本である。



[ファインマン氏の洞察を数点紹介]
NASAのスペースシャトル事故であるチャレンジャー号事件は1986年に起きたロケット打ち上げの失敗で、アメリカの国威に関わる大事件であった。
この調査と問題解決のために組まれた委員会は当然各界のトップクラスの有識者をそろえたメンバーであり、ノーベル物理学者であったファインマン氏は中でも問題解決のキーパーソンであった。

彼の観察には多くの示唆がある。一例を挙げるとすれば次の文だ。「こっちは理論的に起きる可能性のあることに基づいて質問をしているのだが、
作業員の連中から見れば、僕は彼らの扱っている技術的な問題がツーカーで通じる相手に見えるわけだ。工員たちはみるみるくつろいできて、組立作業で改良できる点などの、いろんな思いつきをしゃべりはじめた。」

理論物理学者であるファインマンは、問題となりうるポイントを仮説としておさえてあり、調査に乗り込む前に専門家を集めた1日がかりの勉強でドライブをかけた知識をもとに質問を進めていたのだ。
これは、コンサルタントの述べるような行動のポイントを端的に網羅している。というより、このような一流の問題解決ケースをもとに現代のコンサルタントが技術をまとめあげているというべきだろう。

本書は「科学の価値とは何か」という章でしめくくられる。ファインマン氏は理論物理学の優秀な若者として、原爆開発に携わり、うちひしがれ、1955年にもととなる講演を行った。
「科学があれほどの破壊をもたらしたのを目のあたりに見た僕は、自分がこれほど愛し、これほど全身全霊を打ちこんできた科学というものの価値とは、そもそも何なのか?という疑問につきあたった。僕は是が非でもその解答を見つけなければ気がすまなかった」という序文。
科学の価値として氏の述べていることのエッセンスを僕が一言でまとめるなら、それは「未来に選択肢をより多く残すこと」である。
もっというなら、科学があったことで人の想像力も実現力も高められてきた。科学の追求は知識への誠実さをもととしており、その成果の確立は民主主義の確立とも時期が重なるという。
「着実に進歩を重ねてゆくためには、自分の無知を悟り、疑問の余地を残すということ、これこそが最も重要なことであると私たちは学んできました。」
科学に疎い人でも、本書は本当に楽しく読める。僕自身文系だったが、本当に楽しかった。おすすめの本だ。


http://blog.goo.ne.jp/kazunotesu
アクセスVISION: 事業や業界の動向について、僕の見解を述べているサイト



「テクノロジー4.0」大前研一 著

技術の進化に伴うビジネスモデルの変化について大前研一氏の予測を記した本。
テクノロジー4.0というのはネットの世界(本書ではデジタル大陸と呼ばれる)でのテクノロジー同士のつながりによる種々の変化を指す。例えば位置情報技術とスマートフォン決済を組み合わせたUberが、その変化によって現れた企業として挙げられている。
本書では、テクノロジー4.0の組み合わせに多く用いられる技術として、Fintech、位置情報、IoTの3つのテクノロジーについて、「その技術が何なのか、どうビジネスを変革するのか」を述べている。

[見解]
テクノロジーは相互に連携して新たなビジネスを作り出している最中である。そして、その全ての新しいテクノロジーはスマートフォンを入口として機能している。
金融取引も、位置情報ビジネスも、IoTビジネスも、急速に普及したスマートフォンを中継点として行われるエコシステムを発達させる。
[比較と特徴]
テクノロジーとビジネスの本としてみたとき、本書にあげられている各技術の論点を述べる本は書店に多い。その中で、それらのビジネス革新をテクノロジー同士の組み合わせの成果であるとまとめ、1つの文脈で述べていることは本書の特徴である。
未来予測の本としてみたときは、本当に活用してビジネスを拡大するなら、あるいは始めるならどのような活用があるかにつき何点かアドバイスを出していることが特徴である。比較対象として、マッキンゼーが予測する未来http://amzn.to/2nT652Vがビジネス目線ではマクロな視点を提供しており有益だと思う。

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