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「未来化する社会」アレック・ロス著
本書はアメリカの国務省顧問を務めた研究者が世界中の有識者、首脳と会談し未来についての見識を深めている一冊だ。
扱うテーマは幅広く、テクノロジー進化が政治的安定に与える影響、産業の姿が変わることによる社会への影響、新たなビジネスがどんな形で出てくるかについての考え等が登場する。
数ある未来予測の著書の中でも、かなり読みごたえのある本である。

[内容]
本書は政治制度・社会の経済・都市・安全保障・これからの世代の教育・イノベーションなど広いテーマについて見解を出しており、その事例やキーパーソンとの会談の様子も多く載っている。

例えば、急速な現代化を成し遂げて今後注目を集めるであろうエストニアという国について。
この国は人口130万人の国で1991年にソ連の支配下から抜けたときは競争力をもたなかった。
ここから国を外に開くこととデジタル化を成し遂げることを政治的に決定し、既得権を撤廃して投資を呼び込み、初等教育を充実させ(小学校1年からプログラミングを学んでいる)、急激な成長を遂げた。
技術力も高く、例えばSkypeはこの国の首都タリンで開発されたサービスである。
同じくソ連の支配下から抜けた国でも閉じたままで発展していない国もあり、政治的な決定は発展に大きな意味を持つ。アフリカでも政治的決定による格差は大きく出ていて、イノベーションと女性の社会進出、経済成長の進んでいるルワンダは発展の成功例である。
また、これからの世代の教育は、広く世界を旅して新しい変化を考えられるようにすることを勧めている。機動性を持ち、文化をまたいで活躍する機会を与えることを主張する。
[比較と特徴]
扱うテーマの幅広さが第一の特徴だ。テクノロジーそのものに特化するのはテクノロジー雑誌編集長のケビン・ケリー氏の作品http://kazunotesu.jp/blog-entry-48.html?spが有力で、
社会への影響であればダボス会議創始者の作品http://kazunotesu.jp/blog-entry-133.html?sp、経済であれば大前研一の多くの著書や企業による作品が多くある。
また、ビッグデータの新規ビジネスの例を海外の小さなものまで挙げていたり、急激に成長している国々のリーダーとの対話を紹介していたり、記述の丁寧さも特筆すべきものだ。
他の本では、だいたいUberやエアビーアンドビーなど大企業の例だけだが、小さくとも多様な事例を前にすると、新たなテクノロジーが世界中でどんな変化を起こしているのか、より身近に感じることができる。
未来を考えるとき、一番といっても過言ではない良書だろう。また、具体的な統計を挙げながら未来への潮流を述べているという点で僕の本http://amzn.to/2oroXJOにも独自の価値があると思っている。

http://blog.goo.ne.jp/kazunotesu
アクセスVISION:様々な事業や業界の今後について僕の見解を述べているサイト

ビジネス英語なら日経


「第四次産業革命 ダボス会議が予測する未来」クラウス・シュワブ著
本書は、世界経済フォーラム(年次総会がダボスという場所で行われるため、ダボス会議とも呼ばれる)のクラウス・シュワブ会長が2025年頃までの社会のテーマを広く知ってもらい解決するために記した本である。
ダボス会議はメルケル首相等の国家元首やビル・ゲイツなどの経営者が集まり、世界的な懸念事項について毎年5日間にわたり話し合っている。

[見解]
現代はコンピューター普及による第三次産業革命に続く第四次産業革命の中にあり、これは指数関数的な新技術の普及速度・現実世界に向けてのデジタル世界の拡大と深化・社会システムを問い直すレベルの影響力を特徴とする。
これらは経済面では富の集中を強烈に加速し、法制面では生物としての人間のアイデンティティを問い直す。我々はこの実態を知り、話し合って、人類として良い未来を選びとらねばならない。

[特徴と比較]
視点が人類。他の未来予測の本とは、未来を予測しようとしている動機が異なっており記述のなかで述べられるポイントも異なる。
但しその見識は世界中の有識者を集めて整理した結論を(著者自身も学者であるが)もとにしており、ネットのモバイル化や人工知能、生物合成学などの論点は他の動機で記された多くの未来予測の本に劣らない。非常に読みごたえのある一冊である。
経済的な動機で記された未来予測の本(マッキンゼーが予測する未来http://kazunotesu.jp/blog-entry-118.html?sp、テクノロジー4.0http://kazunotesu.jp/blog-entry-119.html?sp
テクノロジーへの探究心で記された未来予測(インターネットの次に来るものhttp://kazunotesu.jp/blog-entry-48.html?sp、テクニウムhttp://kazunotesu.jp/blog-entry-35.html?sp
も、興味に合わせて読むと面白いだろう。最後のテクニウムは、テクノロジーの歴史哲学といえるような本で、読みごたえも本書と別な独特さを持っている。

http://amzn.to/2ouJubx
未来予測の投資論



「超偏愛 映画の掟」荒木比呂彦 著
ジョジョの奇妙な冒険の作者によるストーリー論となる著作。

いきなりだが、僕はジョジョの第5部には他のシリーズにない魅力をもっていると思っていて、その魅力を自分なりに分析していた。その時は、戦闘シーンの考え込まれた謎によるスリルだと解決して、HUNTER×HUNTERに近い魅力だと思った。

そしてこの本では、そのような分析を荒木比呂彦さんもしていたということに嬉しさを感じると共に(注:他のマンガの話は出ない)、荒木さんによるより優れて練り込まれた分析にはかつて受けた大学の文学系の授業をはるかに上回る迫力があった。


荒木比呂彦さんのみるところ、作品の面白さはサスペンスのことだ。
リアリティのある環境設定、キャラクターの存在と発言。それらで観客を引き込んだあとで、ファンタジーなまでに爽快な動きを含むハラハラしたシーンを迎える。
そのシーンには謎があり、ハラハラしながら物語は進んでいく…

とても簡潔にまとめると以上の通りだ。
これらをどれほど精密に構成するかが、作り手の技術力と言える。もちろんジョジョはこれらの論理による魅力を備えていて、例えば悪役の性格を描写する努力では、ディオやプッチの設定を見ればドラゴンボールを超えているのは明らかだ。

ジョジョも部によって努力のポイントは少しずつ動いているように思う。例えば戦闘の謎に於いてならメタリカは他の部を超えている。

謎のもつ魅力、サスペンスを明らかにしていく楽しみから作品を高める思考に関しては、この本は本当に教科書になると思う。
おそらく荒木比呂彦さんのフィルターを通してみれば、スタジオジブリの「耳をすませば」も人生と恋の悩みを解き明かしていく優れたサスペンス映画ということになるのだろう。
一貫して世のストーリーを説明する、哲学でもあると思えた。




歴史学の古典
古典のなかでも歴史についてのものは、その内容においてヘロドトスとトゥキュディデスの作品がよく比較され、登場してくる。
今回はこの2つのうち、主にトゥキュディデスの作品について解説したい。(久保正彰氏の翻訳版で読んでいる)

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ヘロドトスとトゥキュディデスの両者の著作とも古代ギリシア時代の戦争を軸としたものだが、前者がそれを物語としているのに対し、後者では論説の多い考えさせる作品としている。
特に有名な語句がここから登場していて、「ペリクレスの葬送演説」「話を目で眺め、事実を耳で聞く」などは聞いたことがあるのではないだろうか。(後者は先日の新聞にも引用されていた)
ペリクレスの代表的な演説として知られる葬送演説は、以下の通り内容を分析できる。

・英雄の行動を讃えることを一人の演説者の演説の上手さに委ねてはならない、と認識を整理。
記憶の確認程度に事績をのべる。

・彼らが何のために戦ったのか、社会の理念の話にうつる。
他の政体との比較による明確化
理念の体現としての制度のポイント指摘
社会を担う市民の精神の格調高さを確認
~これらの理念の確認によって、聴く者の誇りを呼び起こしている。

・具体的な年金の話を行い、社会から英雄への補償を確認。最後に英雄への気持ちをつくしたら立ち去るがよいと述べ、演説おわり。

英雄の評価を行い、社会の団結力を高めることにおいて理路整然とした演説に構成されていることに、古代の人たちへの見方も改まる人が多いと思う。これは2500年以上も前の、紀元前450年頃の人の演説なのだ。

それでは彼らの演説はとても素晴らしくて現代には模範でしかないかといえば、それは違う。
古代アテネの政治では「社会のため」を打ち出しているがために、この演説に数ヵ所みられるように、「自ら人生のゴールを決める」ということの自由を制限している。
また、社会の存続のためということでの徴兵に負担感をもたない。これは時代の豊かさが大きく影響していることではあるが、軍事行動という選択肢を極めて軽く考えている価値観は随所にあらわれる。

そうは言っても、世界史を漫然と受験勉強で学ぶより、はるかに古代観がもてる良書であることが間違いない。
歴史に想いを馳せるにも、社会は何を掲げるべきか考えるにも、おすすめの一冊である。


「モモ」ミヒャエル・エンデ著
今回は、子どもにも読める面白い物語として広く知られている一方、テーマには近代社会に象徴的な社会問題の提起があるという次の作品を紹介したい。



ミヒャエルエンデは20世紀後半ドイツの作家で、つまり社会環境が同時期の日本に近い。工業化を急速に進めてひずみが起こっている社会にたいして観察がなされており、そして問題を提起している。(それらは21世紀に於いて、一部は解決されようとしているし一部は保留されている。)

主人公のモモの周囲の大人が語る、工業化された社会での苦しさについての一節はかつての左官屋の語る次の通り。
「手をひとつ動かすにも決められたとおり」
「まっとうな良心に反するような仕事をやってるんだ。…インチキ工事さ!…むかしはいまとちがって、…おれの仕事をほこりに思ったもんだ」

このうち一つ目はテクノロジーの進展により、限りなく自動化されて解決されようとしている。このように無駄にされている時間は、まさに現在進行形で解放されている。
しかし二つ目の問題は、資本主義の利益追求のひどさを指摘しているのだと思うが、むしろ制度の問題であって、言わば昔ながらの問題である。たとえば江戸時代の良心的な役人の上司に悪代官が就いたら同じような苦しさをもったことだろう。

二つ目の問題に解決はあるのか、今でもニュースには不祥事の問題があり困難をうかがわせる。
大人のあきらめの言葉として、本著では「あまり深刻に考えないこと、そんなの関係ないと思うこと」が広がっているという。しかし心であきらめきれず、「だんだんと関心を何にももたなくなって、心はからっぽで冷えきってしまう。退屈の病にかかる」と観察している。そしてそれを、「誰かのため」と言ってのみこもうとしていると指摘するのだ。

モモの友だちには子どもたちも登場するが、そうした心の冷えきった大人たちにまきこまれ、「役に立つこと」だけを「面白いの?」と考えることもなくつめこまされ、心の行き場のない、現在風に言うならキレやすい子どもにさせられていることを指摘している。
つまりこの本には3つの問題提起があって、テクノロジーが1つめの問題を解決しているが他の2つは未だに社会問題であり続けている。現在読んでも、示唆に富む一冊である。児童書というよりフランツ・カフカなどに近い社会小説だ。
カフカの現代社会の描写には、「城」が挙げられるだろう。

こちらも現代社会の作業の1つ1つをみたときの心のこもらなさの実態を述べているものだ。主人公の姿も輪郭が見えてこず、登場する人物もおこる出来事にも全て無気味な薄暗さが漂い続けている作品だ。
この二作について、メッセージ性やストーリー展開では「モモ」が優れていて、心のこもらない大組織の仕事の無気味さをひたすら表現する読み心地では「城」に特徴があると整理できる。

また、工業化され単純作業の増えたころ、一作業員の取り組み姿勢として神話を持ち出しつつ視点をかえる考えを紹介したものがカミュの作品に存在する。


これは作業をしながら変化していく自らに目を向けることで無意味性を克服しようという試みであり、目標意識よりもやらされ感で受験勉強をさせられる立場の学生に近いものがあるのではないだろうか。

学校の勉強に向き合い苦しむ学生というテーマではヘッセの車輪の下も挙げられやすい。

この作品は、たとえていうなら「モモ」に登場する子どもたちの一人を主人公にして、悲劇的に教育の問題点を疑問視しているようなものだ。
ここでは、「モモ」のようなハッピーエンドはないため読後感は言いようもなく暗い。助けが登場することもなく、社会の圧力の苦しさを延々と表現するかのようだ。読後感の強烈な暗さの分、読んできた人たちへの影響は大きかったはずだ。

社会のテーマをめぐる小説の代表的なものについて、興味があれば読んでみてはいかがだろうか。

http://blog.goo.ne.jp/kazunotesu
アクセスVISION: 社会にある色々なおしごとを考えるサイト


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こんにちは。読書アクセスを運営しておりますカズノリといいます。
趣味は読書とラジオを聴くことです。
本屋をぶらつくのが好きで、仕事帰りや休日に歩き回っています。ネットで色々なサイトも見ながら本の情報を仕入れては、家やカフェ、通勤途中で、読書をして考えごとを巡らせています。

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